• 第11回日本医薬品安全性学会学術大会

大会長挨拶

 医薬品が社会に多大な貢献をもたらし、今日の人間社会に必要不可欠な存在であることは周知のことです。数々の新しい医薬品の登場により、多くの人々の命が救われ、多くの病気が改善されてきました。しかし、その一方で医薬品が数々の有害事象adverse eventをもたらしてきたことも事実であります。薬物治療の安全性が叫ばれる今日では、医薬品の有害作用adverse effectsは医療従事者にとって避けては通れない重大な問題になっています。

 本学会は、医薬品がもつ主作用main effectsと有害作用という「光と影」を上手に操り(操薬)、如何にして「影」の部分を少なくするかを追求し、医薬品の安全性の向上を目指すものです。医薬品安全性学は、薬理学、薬物動態学、免疫学および分子生物学が基礎学問になりますが、その課題は医薬品の有害事象の解析、医薬品の有害作用の回避と軽減、医薬品有害反応の現状と動態の分析、医薬品安全性情報の収集と提供、医薬品の安全性に向けた医療機関の取り組み方など枚挙に遑がありません。

 そこで、第1回日本医薬品安全性学会学術大会では、広島県の福山市で開催し、現在問題となっている医薬品の安全性に関する多くのテーマについて多角的な視点から問題提起し、様々な職種や立場から考案し合い、医療機関に有用な指針を与えて医薬品の安全性の向上に寄与し、メインテーマである『医薬品有害事象0(ゼロ)への挑戦の第一歩』にしたいと考えています。

 会長講演では、「薬剤過敏症を極める」という演題で、薬剤過敏症について長い年月に検討してきたテーマについて言及したいと考えています。教育講演では、四つの講演を用意しました。その第一は、「腎機能低下時の医薬品安全性 ~通常医薬品がハイリスク薬に変わるとき~」、第二は「急性薬物中毒とその対処」、第三は「薬剤性肺障害」、第四は「副作用マネジメントで薬剤師の専門性を発揮 ~乳がん外来の場合~」という演題で、第二と第三は専門の臨床医による講演であり、臨床現場における有益な知見を提示してくれると思います。また、第一と第四は、臨床系薬学教員による講演であり、医薬品の安全性に関わる薬剤師の意義および方法を提案してくれると思います。何れの講演も医薬品の安全性を確保しようと考えている医療従事者にとって有用なお話が聞けるものと確信しております。

 シンポジウムは、八つのテーマのシンポジウムを計画致しました。すなわち、「シンポジウム1:医薬品有害反応の臨床解析のススメ,シンポジウム2:医薬品の安全性向上のための副作用モニター活動,ジンポジウム3:ジェネリック医薬品の安全性評価,シンポジウム4:PK/PGxを用いたハイリスク薬による有害事象への介入,ジンポジウム5:病棟薬剤業務により副作用は減少する,シンポジウム6:抗がん剤の副作用対策,シンポジウム7:医薬品過敏反応の原因薬検出法の新たなる挑戦,シンポジウム8:医薬品の安全性評価に薬学的臨床推論をどう活かすか」であります。何れのシンポジウムも極めて興味深いもので、多分野のテーマに対して医師、PMDA職員、病院薬剤師、薬局薬剤師、臨床系薬学教員など多職種のシンポジストにより多角的な視野から提言して頂き、フロアからの発言を加えた討論により医薬品の安全性に向けた多くの指針を築けるものと考えています。

 さらに、本学会は会員の参加型学会を目指すもので、二つのワークショップ『WS1:重篤副作用早期回避のためのシミュレーションPBL ~在宅・病棟のリアル症例で学ぶ~,WS2:医薬品有害反応を未然に防ぐためにどうするか? ~スモールグループディスカッションによる症例検討会~』も用意しました。これらのワークショップに参加することで、医薬品有害反応回避の多くの技能を身に着けることができると思います。また、六つのランチョンセミナーも準備しており、何れも医薬品の安全性に関するもので、参加者に有用な知見を与えるものと思います。

 本大会は、参加者にとって必ずや有意義なものになると信じております。多数の皆様方のご参加と活発な討論を切に願っております。

第1回 日本医薬品安全性学会学術大会
会長  宇野 勝次

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