第9回日本医薬品安全性学会学術大会 読み込まれました

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The 9th Annual Meeting of Japan Society of Drug Safety

日本医薬品安全性学会学術大会

The 9th Annual Meeting of Japan Society of Drug Safety

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薬剤師を取り巻く社会の変化と薬剤師への期待 —医薬品安全性の向上—

薬剤師を取り巻く社会の変化と薬剤師への期待 —医薬品安全性の向上—

 近年では、科学技術の進展に伴い、創薬環境も大きく変貌しています。今までは、メガファーマによる自社開発、創薬ターゲットも生活習慣病などを対象としたブロックバスターが多くを占めていましたが、ベンチャー・アカデミアとのアライアンスによる開発、バイオ製品によるアンメットメディカルニーズを対象とした創薬が増えてきています。この様な製品では、市販前に大規模な治験を行うことは難しく、創薬を促進させる薬事制度(先駆け審査指定制度、条件付き早期承認制度など)の導入も有り、市販前の開発段階から市販後の育薬を見据えた開発が求められています。また、益々高額化する医薬品の開発において、その効率化・適正化のためにも、市販後のリアルワールドデータ(RWD)の活用が求められています。

 2019年12月には、医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(昭和35年法律第145号)が改正され、薬剤師による服薬状況の継続的な把握義務や、条件付き早期承認制度、先駆け審査指定制度の法制化などの新たな承認審査制度の創設、市販後安全対策における添付文書の電子化やバーコード表示の義務化などが定められました。この制度改正の中でも、薬剤師に対して薬を渡した後のフォローアップの義務が新たに付与されたことは、上述の創薬環境の変貌の中において、育薬のキーパーソンとしての薬剤師への期待の表れのひとつでもあります。つまり、患者に医薬品を提供した後の情報を収集し、それを医師にはもちろん、製薬企業や行政などにフィードバックすることで育薬は進められていくことになるからです。

 医薬品をより安全で効果があり、使いやすいものへと育てていくことが育薬です。医薬品の価値を最大にするめには、承認を取得する前の治験だけではなく、承認取得後にも実使用時の情報の調査・収集を絶えず行うことが必要です。そして、医薬品が本質としてもっている特性、すなわち人の身体に対する作用・影響を適切にコントロールして、国民が望まない面を最小限に抑えつつ、国民が求める部分を最大限引き出すための条件を導き出すことが極めて重要です。つまり、医薬品の使用を必要とする個々の患者さんに対して、医療の現場で現に実践されてきた結果である医療情報に基づいて、医薬品の持つ価値を最大化・最適化していくことが求められています。

 本講演では、以上のような医薬品安全性の確保と有効性の確保における薬剤師への期待の元、今後の担うべき役割について、薬剤師の先生方へのお願いも含めて申し上げたいと思います。

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