バイオシミラー普及に向けた臨床の取り組み
バイオシミラーとは、先行バイオと有効性が同等・同質であると判断され、臨床で使用できる生物学的製剤である。薬価も、原則先行バイオの7割程度で設定されることが多く、医療費の抑制に対して大きく期待されている。一方で、先行バイオとバイオシミラーの関係性は、完全に同一構造を有する低分子の先行医薬品と後発医薬品の関係性とは大きく異なる。具体的には、1)目的物質を産生する細胞株が異なることに起因して、先行バイオ製剤とバイオシミラーが全く同じ構造とならないこと、2)製薬企業がバイオシミラーを新たに開発する場合、低分子化合物と異なる承認プロセスを経て上市に至ることなど、複雑である。
演者が所属する昭和大学では、バイオシミラーが上市されると、直ちに採用し、適応に問題がないケースにおいては切り替えを積極的に推奨している。現時点では強制的に切り替えるまでには至っていないものの、フィルグラスチムのように有効性が短期間で判断できるものはスムーズに切り替えが可能である。一方で、有効性や安全性が短期間で判断できない製剤の場合、切り替え時に同意を得る際に苦労することも多く、また、先行バイオとバイオシミラーの違いや適応の外挿などについて説明すればするほど医師や患者からの不安や懸念が上がってきてしまうというジレンマも経験している。
本セッションでは、本学におけるバイオシミラー切り替えへの取り組みを紹介しつつ、演者がスウェーデン留学中に現地の医師、薬剤師からの聞き取りにより得られた最近のスウェーデンのバイオシミラーに関する状況などを日本の状況と比較しながら提示したい。
本発表を通じ、フロアーの皆様とバイオシミラー普及に向けた実臨床の取り組みについて広く議論できれば幸いである。
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