第9回日本医薬品安全性学会学術大会 読み込まれました

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The 9th Annual Meeting of Japan Society of Drug Safety

日本医薬品安全性学会学術大会

The 9th Annual Meeting of Japan Society of Drug Safety

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漢方薬には副作用はないから......

漢方薬には副作用はないから......

 一般の人の中には、「漢方薬には副作用はないから......」などという話をする人がいますが、漢方薬にも副作用などの有害事象は存在します。

 副作用とは「使用基準に従い、適量を投与したにもかかわらず引き起こされる有害な反応」と世界保健機関により定義されています。漢方薬では間質性肺炎、偽アルドステロン症、肝障害などが知られています。最近では、漢方薬の長期投与による腸間膜静脈硬化症というものがあります。漢方薬の副作用は、その発生頻度、発症メカニズムなどの多くはまだ充分に解明されてはいないところもあります。

 このほか、漢方薬の有害事象として漢方独特な考え方があります。これには誤治(ごち)や、瞑眩(めんげん)というものです。

 漢方的に誤った治療による有害事象を「誤治」と呼んでいます。例えば、胃腸が弱い高齢者の下肢の冷えに八味地黄丸を使うことで、食欲低下や胃もたれなどが生じる場合などです。八味地黄丸は、胃腸が丈夫な人の夜間頻尿、下肢の冷えや痛みに用いる薬です。胃腸の弱い高齢者は、漢方的には八味地黄丸の適応ではありません。これは漢方的に誤った治療により発症した事象です。漢方薬による治療は、適切な診断に基づいて行う必要があります。

 漢方薬で治療をしていく過程で、不快な症状が出現することがあり漢方では「瞑眩」と言っています。この瞑眩は、漢方薬をのみ始めたときに、既存の症状が増悪したり、新たに下痢、嘔吐、発熱、発疹などの症状が一時的に激しく出現するものです。服薬を続けるとその症状は数日でおさまり、以前から存在する症状も改善に向かっていきます。治療の経過中に、瞑眩と判断するのは困難な場合が多く、瞑眩は軽快して初めてわかります。臨床では投与中の漢方薬による治療を継続するか、あるいは漢方薬を変更するべきか、というたいへんに悩ましい問題です。

 このほか漢方薬の安全性に関しては、漢方薬を構成する生薬の問題もあります。葛根湯エキスに関して第18改正日本薬局方には、生薬の組み合わせによる4種類の処方パターンがあります。麻黄は3g、あるいは4gを使用します。エキス当たり総アルカロイド(エフェドリン及びプソイドエフェドリン)は7~30mgという幅に決められています。このように成分において4倍以上という幅があります。生薬の麻黄については、定量するとき換算した生薬の乾燥物に対し、総アルカロイド0.7%以上を含むという記載です。生薬は薬としての下限は決められていますが上限は決められていません。ですから臨床では、漢方薬の生体への作用を経過を注意深くみていく必要があります。このほか、生薬に関しては農薬の残留やカビの発生などの問題もあり、各企業が漢方薬の安全性担保に取り組んでいます。

 漢方薬にも有害事象は存在します。副作用や漢方独特の有害事象である誤治、瞑眩、生薬の品質担保に関する問題などを紹介します。

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