うつ病の薬物療法
ハイリスク薬に指定されている薬のうち、約3分の1は精神科治療薬である(三輪高市.医薬品安全性学3:69- 79,2018)。したがって、精神科治療薬はハイリスクであることを十分説明し理解を求めて処方することが望まれる。一方、WHO(2015)は、生活の妨げの指標であるyears lost due to ability(YLDs)の第1位となる疾患として、精神疾患を挙げている。ヨーロッパでは脳(精神・神経)疾患にかかる社会コストは約80兆円にものぼると試算されている(Smith K. Nature 478: 15, 2011)。このように精神疾患が個人と社会に与える損失は大きく、精神科治療薬のベネフィットはけっして過小評価されるべきではない。うつ病にかかっている人の3/4は、 病状で悩んでいても病気であると気づかなかったり、医療機関を受診しづらかったりして、医療を受けていないと考えられている(厚生労働省.https://www.mhlw.go.jp/shingi/2004/01/s0126-5d.html)。少しでも多くの方に、うつ病の薬物治療を受けていただくには、精神科治療薬を安全に処方することが大切だと思われる。
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