待ったなし!薬剤師によるePROを活用したirAEマネジメント
非小細胞肺癌(NSCLC)では複合免疫療法として免疫チェックポイント阻害薬(ICI)に殺細胞性抗がん剤やCTLA-4抗体との併用に加え、PD-L1陽性の非小細胞肺癌における術後補助療法にテセントリクが使用可能になった。加えて多数の疾患でICIが承認され、今後益々多くの患者に使用されていくだろう。それと共に、ICIによる免疫関連有害事象(irAE)対策は益々複雑化および重要視されている。現在まで多数のirAE関連の論文、がん免疫療法ガイドラインの改訂および製薬企業の情報提供、各病院での取り組みや、薬薬連携を含む地域連携により、承認当初と比較しirAEマネジメントが進んでいるのは間違いないが、irAEを見落とさず、より早期発見・早期治療が重要となる場面は増加している。
今年の3月に患者報告アウトカム(PRO)使用についてのガイダンス集が公表され、本邦でもPROが臨床試験でも実臨床でも使用される土台が整ってきた。PROとは、患者の回答について、臨床家や他の誰の解釈も介さず、患者から直接得られる患者の健康状態に関するすべての報告であり、がん治療中の患者に対してデジタルツールを用いelectronic Patient-Reported Outcome(ePRO)をモニタリングした結果、全生存期間や生活の質を改善した報告もある1)。小松市民病院(当院)では薬剤師がePROを用いてICI使用患者の症状をモニタリングしている。その結果、重篤なirAEを早期発見し救命することができ、更に緊急受診のリスクを大幅に減少させた。そのため、薬剤師がePROを用いて患者の症状をモニタリングし、緊急性を含めた症状をアセスメントすることにより、irAEを見落とさず早期発見・治療につながり、患者は安心して外来治療ができることは現代のニーズに即しており、ePROの有用性は高いと考えられる。
ICI治療中の患者に対してePROを用いた報告はまだまだ少ないが、本講演では、明日からでも使用可能なirAEマネジメントの1つとして、ICI治療中の患者に対して薬剤師がデジタルツールを用いePROをモニタリングすることによる有用性について、当院の活動内容と共に紹介する。
参考文献
1)E. Basch et al. Jama, 318: 197-198(2017).
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